『生の短さについて 他二篇』セネカ

徳を最高の善とするストア派。徳、というと他人のために何かする、世の中の役に立つ、イメージがあったが、大辞林を見ると違った。

とく [0] 【徳】

修養によって得た,自らを高め,他を感化する精神的能力。 「 -を積む」 「 -を養う」

精神的・道徳的にすぐれた品性・人格。 「先生の-を慕う」 「 -の高い人」

身に備わっている能力。天性。 「よく味(あじわい)を調へ知れる人,大きなる-とすべし/徒然 122」

めぐみ。神仏の慈悲。加護。おかげ。 「 -を施す」 「神の御-をあはれにめでたしと思ふ/源氏 澪標」

善政。 「師(いくさ)をかへして,-を敷くにはしかざりき/徒然 171」

富。財産。裕福。財力。 「上達部の筋にて,中らひも物ぎたなき人ならず,-いかめしうなどあれば/源氏 東屋」

富を得ること。利益。もうけ。得。 「時の受領は世に-有る物といへば/落窪 1」

ストア派のいう徳はまさに①にある精神的能力のことだった。何事にも動じない、支配されない精神。解説に、倫理面でキリスト教の下地となったとあるけど、宗教は神秘性や芸術、政治に利用されたり、とにかく信じていればよかったり、いろんな広がりがあるのに対し、哲学は神秘性のかけらもない。日々どう生きればいいのか、特効薬などもない。ただ膨大な人間の具体例と観察眼が、流暢かつ辛辣な文章で書かれていて、しかも友人への手紙という形式だから読みやすい。解説によると、この、君は、というのがだんだん自分に向けて言われているように感じ、対話によるセラピー効果もあるらしい。それだけ親しみやすさを感じる。ちらっと出てきた宇宙観にも興味を惹かれた。他人のことで心を煩わすのはバカバカしい。自分がしっかりしていなければ人にも悪い影響しか与えない。インターネットに支配されるな。と戒める。

 

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)